「催眠療法」Ⅵ

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トラウマ(心の傷)とは

 最近はトラウマという言葉がよく使われています。一般的に使うトラウマという表現は、精神医学や臨床心理学の領域での厳密なトラウマの概念や定義では認められないこともあります。それは、トラウマによる後遺症が、損害賠償の対象として捉えられるようになったからです。未だに日本においてはトラウマによる後遺症の損害賠償というのがなかなか適応されませんが、賠償責任が問われるアメリカなどは賠償を対象とするトラウマの定義が必要となり、厳密な診断基準があります。だからそういった診断基準において、一般的に使っているような意昧合いでは、トラウマとして表現しない(認められない)場合や、現在はそこまで広範囲に認められていないが近い将来は認識され認められるだろうという部分も含まれ表現される場合もあります。トラウマというものは、個人差が大きいだけにまた偽ることができるだけにしっかりした枠決めが必要になります。
 トラウマと共にPTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉もよく使われるようになりました。これが賠償の対象になるわけですが、いわゆる、事故や災難を体験した人が、その体験後に、心に癒しがたい深い傷が残り、精神面や身体面に何かの症状が出て苦しむことを言います。しかし、トラウマ同様、そのような体験後に心の傷が長引くか、自己治癒力で治っていくか、またどのような症状を作り出すかは個人差があり、誰が体験しても同じような結果を生むということはないのです。しかしながら、このような条件を満たした場合は、トラウマやPTSDとして認めましょうという診断基準が作られてきました。そしてその概念と基準は、今なお随時改善され書き改められているという状態なのです。
 本書ではトラウマという言葉を一般に分かりやすいように、心の病を作り出している様々な原因となっている過去の出来事としてとらえていきます。それは単回性な出来事(事故や災難で作られるシングルPTSD)であったり、反復的、慢性的なもの(長期にわたる子供時代の環境で作られるコンプレックス(複合)PTSD)であったり様々です。
 このコンプレックスPTSDは長く議論されてきましたが、事故や災難などのシングルトラウマが作り出すPTSDの診断基準のように、公式診断項目に現在は盛り込まれていません。なぜなら正しく診断できるかの問題が残るからです。しかし、長期にわたり反復するトラウマ、例えば、幼児期を含めた子供時代の虐待やいじめなどの様々な苦痛がトラウマとなり、非常に大きなパーソナリティ上の問題を作り出しています。感情のコントロールができない、回避性が強く出る、自己感覚の変化、加害者への異常な執着、対人関係での安定感の欠如など大きな問題となっています。このコンプレックスPTSDは臨床的にも重要な問題としてとりあげられています。本書においてもこの子供時代のトラウマの問題が中心になります。
 また、一般的に精神医学の分野でトラウマとまでは呼べないような要因が心の病を作り出している場合もあります。例えば、幼少期の家庭環境による心の偏りやとらわれなどで作られる後天的性格、また、勝手な思い込みにより、親や友人達と心を開いた会話ができず、人間関係の誤解などを修正することなく、過ごしてきた結果が心の病を生み出すひとつの大きな要因となることもあります。実際子供のときから誰にも相談できずに一人思い悩んできた思いや考え、誤解や性格的癖を修正してやることで長年苦しんできた心の病が治ることもよくあります。こういったことも心の病を作っていた原因のひとつであるので、本書ではまとめてトラウマと表現していきます。

◆目 次◆

まえがき

第1章 催眠療法について
催眠療法とは
催眠療法のあり方について
心を治すとは
トラウマ(心の傷)とは
治療者側に努力と向上
退行催眠療法とは
どのようにして症状が消えるか

第2章 症状の実際と治療理念
寂しくて一人でいられない
親の愛情を受けていない
親を殺したくなる
子供時代の環境(不安神経症)
共依存症
パニック障害
強迫性障害(強迫神経症)
症状が進行する背景
■強迫神経症の場合
■おならで悩んでいる場合
人と交流ができない
自分に自信が持てない
赤面
身体醜形(恐怖)障害
劣等感
対人緊張・あがり
対人恐怖・視線恐怖
多汗症
幼児虐待
■親からの虐待
■世代間伝達
性的不能
性的虐待
前世療法について

付 録 
自己催眠と他者催眠
自己催眠を学び活用することの価値
他者催眠術に対する誤解
他者催眠術の習得

あとがき