「催眠療法」ⅩⅠ

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どのようにして症状が消えるか

 ひとつの例として親から受けたトラウマや長期のストレスで苦しんでいる人にとって、親を許すことなど到底考えられるものではありません。しかし、そのことを恨み、こだわりを持っている限りその人の心を癒し、症状から解放することはできません。子供の頃、その子の生まれつきの性格的特性により、親に対する要求が様々に起こってきます。その要求に親が応えてくれないと苦しみ強い不満が募ってきます。そのとき、その子の個性に応じた親に対する反抗がなされ、その結果親子関係がこじれてくる場合があります。このようにこじれる原因は、親自身が引きずっているトラウマのせいだったり夫婦間のトラブルによって親が常にイラついた状態によるものであったり、様々ですが、子供にとってはそのような状況の把握ができないだけに、ただその満たされない感情だけに振り回されて心がとらわれていきます。子供時代は精神面においても知識面においてもまだ不完全な状態なので自分にとって不快に感じる世界にのみ心が動きます。
 それゆえに、自分が親のおかげでいかに保護されているか、親のそういった性格のゆえにいかに自分が別の意昧で救われているかという面に理解を示すことが子供時代にはできません。それができるほど成長していれば親子関係がこじれたり破壊するケースがかなりなくなることでしょう。基本的には親の人問性を理解できない子供の心の幼児的未熟性にありますが、これも仕方ないことでもあります。もちろん弁解の余地なく親が悪い場合もありますので一概には言えません。
 しかしながら、どのような場合であっても、自分が変わらなければ人生を壊している症状から解放され、白分の人生を有意義に過ごすことはできないのです。人(親)を変えるのではなく、自分を変えなければ何事も解決できないことを悟ることです。自分が変わっていく中で、相手に対し見方も変化していくことで相手に対するかかわり方も変わり、手もそれに反応して自然に変わっていくことが多くあります。それで親子関係や人間関係が驚くほど改善されていくことがよくあります。もちろん変わらないこともありますが、どちらにしても、自分の人生に主体を置くことが重要なのです。自分のために自分が変わっていくことが重要なのです。
 そのためには催眠療法を行う過程で、催眠(トランス)状態を利用して無意識にどうあるべきかを語りかけていくことが必要になります。その技術は短期間で人が変わっていくことを可能にするのです。
 また別の心の病においては、自分にとって不都合なことや、白分が行き詰まった状態にいることを受け入れたくないがために、それを自他ともにごまかすために、症状を無意識的に作り出す場合がよくあります。これは疾病利得(二次利得)といって、病気になることで本人が意識できない何らかのメリットを得ています。このように、何かの症状が出て苦しんでいるときは、自分の中で何かに行き詰まっている問題があることがよくあります。
 例えば受験生が、親の期待に応えられないとジレンマで苦しんでいるとき、自分の能力の限界にぶつかり、引くに引けずに追い込まれたとき、人との比較の中で劣等感にさいなまれその人に立ち向かうことを観念し逃げに入ったとき、また男女間の愛情問題などは、症状を作りやすくなっています。そうして無意識的に作り出した症状を盾に現実から逃避することができるのです。いわゆる無意識がその人の心を追い詰めて壊さないように、症状を作り出し逃げ道を作ってやっているようなものです。もちろん、誰もがそのような逃げ場としての症状を作り出せるものではありませんが、生まれつきの性格や脆弱性因子(ストレスに対する弱さ)や子供時代の環境によって症状の種類と深さが決まってきます。
このような場合は、このこと(疾病利得)に段階を踏みながら自然に相談者に気づかせることです。催眠(トランス)状態の中で、白分の心をしっかりと見つめさせ、今後どのように現実に対処していくべきかの決意を無意識の中に植え付けていきます。またそれをやり遂げる力を与えてやります。そうすることで前向きな積極的姿勢が心の力をさらに強め、症状という逃げ場を必要としなくなったときに心の病は治っていきます。
 常にトラウマだけが単独に心の病を作り出すわけではありません。人は人情のしがらみの中で、どうしてもがんじがらめにされた人生を送っています。人は子供の頃から聞かされ教育された人情の世界を無意識的に受け入れて、それを意識するしないにかかわらず利用している面もあります。その方が相手を自分にとって得になる方へ動かしやすい場合があるからです。でもその人情というしがらみが、人を心の病へと追い込んでいくことがあります。人はこうでなければいけないとか親に対してはこうあるべきだとかいうような教えや感情に単純に、そして無批判に多くの人々が振り回されています。
 よく子供に対して支配的である親がいます。ここまで育ったのは誰のおかげだと思っているのかとか、親に対する感謝の気持ちがあれば、このようにして恩返ししろとか様々な要求をされ、それができないなら親子の縁を切るとまで脅されると、子供としては泣く泣く親の要求に従わざるをえなくなります。中には家の仕事の後を継がなければ、今までお前を学校に行かせるのにかかった金を働いて返せとまで言われることもあります。

◆目 次◆

まえがき

第1章 催眠療法について
催眠療法とは
催眠療法のあり方について
心を治すとは
トラウマ(心の傷)とは
治療者側に努力と向上
退行催眠療法とは
どのようにして症状が消えるか

第2章 症状の実際と治療理念
寂しくて一人でいられない
親の愛情を受けていない
親を殺したくなる
子供時代の環境(不安神経症)
共依存症
パニック障害
強迫性障害(強迫神経症)
症状が進行する背景
■強迫神経症の場合
■おならで悩んでいる場合
人と交流ができない
自分に自信が持てない
赤面
身体醜形(恐怖)障害
劣等感
対人緊張・あがり
対人恐怖・視線恐怖
多汗症
幼児虐待
■親からの虐待
■世代間伝達
性的不能
性的虐待
前世療法について

付 録 
自己催眠と他者催眠
自己催眠を学び活用することの価値
他者催眠術に対する誤解
他者催眠術の習得

あとがき