「催眠療法」ⅩⅥ

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他者催眠術に対する誤解 

 他者催眠術に関して、いろいろな誤解および間違ってはいないが、ある側面のみしか表現されてなく誤解を生じさせている事柄や説明が、残念なことに多くあります。
 例えば、「人によってかけられる他者催眠術というものは、白己催眠に他ならない」と表現されている専門家の書物を読めば、一般の人はそんなものかと納得してしまうことでしょう。しかし、他者催眠の“術”というものはそんな薄っぺらなものではありません。
もちろん、人を催眠状態に導くときは、その人の催眠感受性を利用しますので、その人が自己催眠に入っていく能力を、利用しているという意昧では、確かに同じ状態ではあります。しかし、他者催眠術というものはそれだけではないのです。相手が自己催眠に入ってくれるように協力的でなくても、相手を強引に催眠状態に導けます。相手に協力じてもらうようなラポール(信頼関係、安心感)など必要ないのです。それゆえに“術”なのです。また他者催眠術は自己催眠では到達できない深い催眠状態を作り出すこと・もできるのです。この“術”には、技術というテクニックの世界と、神秘的な世界も含まれます。考えてみてください。この世の中、科学だけでは解明できない多くの不思議があります。催眠の世界も然りで、まだまだ科学では解明できない奥の深い神秘的な世界が広がっています。時々科学的催眠法とかいう言葉を耳にしますが、全くナンセンスだとは思いませんが、やはり力不足を感じます。催眠の世界を科学で解明することも、価値はありますが、未だほんの一面しか見えていないのに、それが全てでもあるように誇張されたら、これは納得がいきません。催眠に入っている状態の人の脳波が、よく研究されていまますが、何らかの方法で、同じ脳波を作り出せたとしても、その人は催眠状態であるとはいえないのです。どんなに脳波を測定してα(アルファ)波とか、θ(シータ)波とか、δ(デルタ)波とかが、分かったとしても、その人は今催眠状態に入っているという確証も断定もできないのです。催眠状態とは、まだまだ未知なる神秘の世界なのです。
 このように書くと、人によっては催眠を怖く感じる方もおられるでしょうが、そんなに恐れることではありません。人を強引に催眠にかけるといっても、その人が嫌がることやその人にとって害になることは、そう簡単にはできないのです。しかし、その人を長期間拘束して自由を奪えば可能です。ただし、それは犯罪を犯すことで、決してやるべきことではないのです。
 催眠術はその価値を深く理解し、もっと意義あることに活かすべきなのです。催眠術というものは、人の無意識に働きかけることができる害のない強力な手段なのです。そして催眠現象が、無意識の働きである以上、まだ不思議なことが多く、今の科学だけでは解明できない世界があるのです。 無意識の世界においても、個人的無意識のみならず普遍的無意識ともなれば、その全貌が把握できないのと同じことです。
 人間の脳は右脳と左脳に分かれています。そしてこの二つは脳梁という器官で繋がっていて、相互に情報が伝達されていますが、互いの働きは違っています。詳しい脳の働きはここでは触れませんが、左脳に関しては意識脳と呼ばれ、右脳に関しては無意識脳とも呼ばれています。そして催眠に人がかかるという秘密は右脳にあるのです。私は以前から、テレビなどで右脳を使っている人が、催眠に入りやすい人で、左脳しか使うことができない人は、すんなりと催眠に入っていくことができない人ということを語ってきました。したがって、頭がよい人が催眠に入りやすいと言ってきました。もっと詳しく言えば、右脳を使っている人は、学校の勉強においては、記憶することにすごく有利です。記憶することが楽なので、授業を聞いているだけでかなりの部分が記憶に残り、また思い出すときも鮮明に思い出すことができます。そしてこの右脳を使うという能力は、生まれつきもあるのでしょうが、幼稚園の頃までに右脳が刺激されて、右脳を使う訓練ができているかによって違ってきます。
 右脳が無意識脳と呼ばれているのには理由があります。右脳はイメージを作り出し、このイメージが催眠には必要なのです。無意識は言語を直接には理解できません。無意識に伝えたい内容は、言葉としてではなく、いったんイメージに変換されて無意識に伝達されます。このいったんイメージに変換する働きを右脳が担っています。ですから、右脳を剌激することが、催眠を深める最大の手段なのです。催眠という不可思議な現象を作り出している秘密は、人の右脳の慟きに隠されています。
 また、催眠療法で無意識の中に抑圧された様々な感情を含めたトラウマを解放してやるためにもこの右脳の働きが必要になりますが、催眠療法としてとらえたときには、右脳だけに頼る必要もないのです。確かに右脳が働くとイメージが出て、催眠療法の手法にバリエーションが望めます。しかし、イメージが出ない左脳派の人に対してでも、私の催眠療法は十分に効果を上げることができます。
 人の能力というものは、もちろん右脳が発達していることで、全てが有利になるものではありません。左脳とのバランスが悪ければ、高度な思考能力が発達しません。さらに言えることは、右脳のみが発達しすぎている場合、これば素晴らしい能力ではあっても、諸刃の剣で心の病に陥りやすくなります。

◆目 次◆

まえがき

第1章 催眠療法について
催眠療法とは
催眠療法のあり方について
心を治すとは
トラウマ(心の傷)とは
治療者側に努力と向上
退行催眠療法とは
どのようにして症状が消えるか

第2章 症状の実際と治療理念
寂しくて一人でいられない
親の愛情を受けていない
親を殺したくなる
子供時代の環境(不安神経症)
共依存症
パニック障害
強迫性障害(強迫神経症)
症状が進行する背景
■強迫神経症の場合
■おならで悩んでいる場合
人と交流ができない
自分に自信が持てない
赤面
身体醜形(恐怖)障害
劣等感
対人緊張・あがり
対人恐怖・視線恐怖
多汗症
幼児虐待
■親からの虐待
■世代間伝達
性的不能
性的虐待
前世療法について

付 録 
自己催眠と他者催眠
自己催眠を学び活用することの価値
他者催眠術に対する誤解
他者催眠術の習得

あとがき