「催眠療法」ⅩⅧ

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あ と が き

 この本を読んで頂いた方々が、人それぞれの人生のドラマにおいて、どのように役立てて下さるかは分かりません。人生とは、好むと好まざるにかかわらず展開していく人生の環境の中で、何を学びどのように成長していくかが大きな問題だと考えています。「人生を通しての成長、向上などばかばかしい、面白おかしく生きていければそれでいいのだ」と考えている人にとっては、この本は何の役にも立たないばかりか、たぶん最後まで読んで頂けないでしょう。それはそれでよいことであり、皆が人生上でどのような思いを抱き過ごすかということを強要すべきではないでしょう。
 しかしながら、人生とは常に満足して生きておれるものではなく、時として苦しみ悩み、どうしようもない不運に打ちのめされたりすることもあるのです。そういうときに初めて自分の生き方を見つめなおすチャンスが訪れているわけですが、そこからも逃げて、ただ楽な道だけを求め、もがき苦しむ人がいかに多いことかを感じさせられます。
 スポーツ選手を例にとっても、常日頃トレーニングで自分を鍛えている人と、気まぐれに身体を鍛えている人とが、同じ競技で競ったときに同じ結果を得るとすれば、これほど不公平なことはありません。充実した人生、満ち足りた幸福感を昧わうことも、人生における努力なしでは、決して勝ち得ることはないということを学んで欲しいと願っています。
 人は生まれながらの性格的特性、素質などにより同じ環境にあっても、そこで受ける影響が違ってくるもので、成長の過程において、どれだけの成長が望めるかも犬きく違ってきます。人それぞれいろいろな環境や、持って生まれた能力の違いによって生じる様々な苦しみによって精神的に追い込まれていきます。そして個人の限界を超えるストレスを受けたとき、心の病にいたっていきます。もちろん、自己治癒力で時間の経過と共に乗り越えている場合がありますが、逆に症状が悪化している場合があります。このように心の病が深まっていく場合は、背景にトラウマもしくはそれに類する原因が横たわっているものですが、どちらにしても、的確な援助の手を差し伸べることができれば、人は自分の人生に起こる全てのことを乗り越えていくことができるだけの心の力を持ち合わせていることを信じなければいけません。人の人生ではない、自分自身の人生におけるあらゆる苦難は、自分を成長、向上させるためのものであり、自己破壊のために生じてくるものでは決してありません。しかしながら、一人で苦しんで症状が悪化していくと、もうどうにもできなくなり、もがき苦しみ解決の光が見えてこなくなってしまいます。
 そこまでくると自力だけでは乗り越えられなくても、カウンセリングなどの手助けで自らを救い出し成長していけるものです。
 個人の人格を含めた総合的成長の違いによって、自分の子供との接し方だけではなく対人全般においてのかかわりにも大きな違いが生じます。もちろん、本書で触れてきたように、子供時代のトラウマや長期にわたるストレス体験、一過性であっても強烈な出来事を二、三回繰り返すことによって、ある出来事による感情の表れ方に影響が出ます。これらは自分ひとりの力ではどうにも修正できない場合から、どうにかなる場合まで様々ですが、それを乗り越えるには意識された努力が必要になってきます。それらも含め、個人の持って生まれた能力や、遺伝素質とは関係なく、努力によって人生に起こるあらゆる問題を解消し自己向上していくことができるものです。なぜなら、それは他人の人生ではなく白分自身の人生だからです。人はそのように生まれていること、特に心の病に関しては、自分に課された課題を乗り越える心の力を有していることを信じで欲しいと願います。
 自分が現在苦しんでいるのは、親がこういう育て方をしたからだとか、親の影響でこうなってしまったと責める人も多くいますが、不幸にも親に服従しておかなければ、生きていけない子供時代にそのような悪い影響下にあり無防備に親の悪しき影響を受けたとしても、成長とともにそれを乗り越えていく力も基本的に人は持って生まれていると考えています。また、親子関係において、親と子供との接し方で、子供がその親に対しどのような態度で受け入れるかによって、双方の感情もまた違った展開になるでしょう。そう考えれ
ば、子供の方にも親の感情を刺激して余計な仕打ちを受ける原因を作っている場合もあります。しかしながら、子供にとってはやはり不幸なことでしょうが、でも親ばかりを責めるわけにはいかないところも理解しなければいけないと考えています。
 子供が、自分の現状に苦しむ中で親を責めている場合があります。そのような精神的未熟さを引きずって年齢だけを重ねてきた場合、自分の周りにいる人たちの中で、自分に都合がよい人以外は、親を責めるのと同じような感覚で責めるようになります。そのような、未熟で甘えた己の精神世界に気づくことができず、自分が不幸なのは周りが悪いとして、周りを責め孤独な中で生きていくことになってしまいます。本文をじっくり読んで頂き、今まで考えることなく過ごしてきた自分の中の未熟さにも気づいて欲しいと願っています。

◆目 次◆

まえがき

第1章 催眠療法について
催眠療法とは
催眠療法のあり方について
心を治すとは
トラウマ(心の傷)とは
治療者側に努力と向上
退行催眠療法とは
どのようにして症状が消えるか

第2章 症状の実際と治療理念
寂しくて一人でいられない
親の愛情を受けていない
親を殺したくなる
子供時代の環境(不安神経症)
共依存症
パニック障害
強迫性障害(強迫神経症)
症状が進行する背景
■強迫神経症の場合
■おならで悩んでいる場合
人と交流ができない
自分に自信が持てない
赤面
身体醜形(恐怖)障害
劣等感
対人緊張・あがり
対人恐怖・視線恐怖
多汗症
幼児虐待
■親からの虐待
■世代間伝達
性的不能
性的虐待
前世療法について

付 録 
自己催眠と他者催眠
自己催眠を学び活用することの価値
他者催眠術に対する誤解
他者催眠術の習得

あとがき